夏日の中、会場には56名が集い、第1回学習会が開催されました。 今回は“自己の看護実践に変革を生み出す”ことにチャレンジする3回シリーズの第1回目でした。ニューマン理論のもと、私たち看護師が自己のケアパターンに気づき、その意味へと洞察を深め、新たなケアへとその一歩を踏み出そうというものです。今回は、その計画の立て方を学ぶことがテーマでした。
先ず、遠藤理事長による、自己のケアパターンの探求が看護学にとってどのような意義があるのかという講演からスタートしました。その内容は、Barbara Carperの文献をもとに実践の学問である看護学が探求すべき‘知’には、経験知(科学的な側面)・審美知(アートな側面)・パーソナル知(自分、ユニークな自分、他者との関係における自分について知)・倫理知(倫理的な側面)があること、さらにChinn & Kramerの文献に基づき、それらを巻き込み新たに生み出された解放の知(人々の苦悩からの解放・変化を生み出そうとする側面)があるというものでした。そして、ニューマン理論のもと、ナースである私たち全体が開示するケアパターンには、これら全ての‘知’が重なり合っており、自己のケアパターンの探求は、看護師としての成長と進化を、そしてケアの変革を生み出し、看護学にとって意義ある取り組みであることが力強く説明されました。私という個の変化が、看護学の発展へとつながっていく、それはまるで、学問の進化へとつながる大きな流れに包み込まれていくようでした。会場の皆さん一人一人の表情からも驚きとともに、これからの自分たちへの期待が高まっていくのを感じました。
しかし、どうやって取り組めばよいのだろう?本当に私たちにもできるの?そんな疑問の声が会場のあちこちから聞こえてくるようでした。そこで、次に登場したのが三次副理事長による、ニューマン理論に基づいた、ナースのケアパターンの意味とそれを認識することの重要性についてでした。次いで鳥取から参加している池田牧さんが、自分のケアパターンを認識し、それまでのケアが一変した体験を紹介してくださいました。
池田さんは、本NPO事業であり、実践的看護研究を学ぶ“プラクシス6回コース”の受講生です。彼女は、そのコースで、ニューマン理論に基づいたケアをしてきたと思っていたAさんの事例を提示するなり指導者から、「医学モデルのもとでのケアだ!」と言われました。大きな衝撃を受けたそうです。しかし、改めて自分自身のケアを見つめていると、疾患を取り除くことを重視する医学モデルにはまりAさんとの関係に行き詰まりを感じている自分や、傾聴や共感をしても自分の枠の中に留まり続けている自分のケアパターンに気づいたのだそうです。それはまるで、出口のない回し車を回し続けるハツカネズミのようであると。さらに、いつも「本当は…」という自分の‘心の声’を発することなく、その場の対応で終わったままで、一歩を踏み出してこなかった自分のケアパターンの意味へと洞察を深めたのだそうです。それからの池田さんのケアは、その人の持つ力を信じて向き合い、自分の核心に立ち率直に自分を表現するケアへと大きく変化しました。この自己のケアパターンを認識する過程は、池田さんにとって、とてもとても辛い体験だったそうです。しかし、踏み出した新たな看護は、関わる患者さんとその家族に違いを生み、看護師としての自分を成長させたと、とても嬉しそうに(ちょっと恥ずかしそうに?)語って下さいました。そんな池田さんを見つめる会場の参加者からは、池田さん変化を称え、喜びを分かち合うとともに、「私も自分のケアを変えたい!」という願いが湧き上がってくるようでした。
そして、ここから参加者の皆さんがグループに分かれて、自分自身のケアパターンを見つめるワークが始まりました。‘ワーク’というと何やら作業のようにも聞こえますが、そこは私たちの研究会のこと。一人一人の気になる実践場面を語り、その語りを自分自身に引き付けながら、一心に耳を傾ける対話が繰り広げられました。そしてその語りの中に浮かび上がるケアパターンを見出そうと互いに関心を寄せあい、対話はさらに深まっていきました。80分というワークの時間があっという間のように過ぎていきました。学習会が始まったころ、「自己のケアパターンを知ることにどんな意味があるのだろう?」、「遠藤理事長の話が、宇宙のことを話しているように聞こえる」と語る参加者もいました。しかし、ワークが終わるころには、“ナースである私たち全体が開示するケアパターンには、これら全ての‘知’が重なり合っている”という言葉の意味が「よくわかる!」、「信じられる!」と変化していったのです。そして、いつものように、会場いっぱいにケアリングの輪が拡がっていきました。
次回は、参加者一人一人が記述してきた自分の実践を、自分のケアパターンを認識するという観点から、どのように分析するかということを学んでいきます。ですから、自分の実践場面を書き出して持ち寄ることが宿題となりました。会場から、「次回も同じメンバーで集いたい」との意見が出されました。しかし、常に進化と成長をモットーとする私たちの研究会は、「“安定”ではなく“変化”を求めよう!」ということで、次回は新たな仲閒との出会いと相互交流を楽しみながら‘ワーク’を進めることを選択しました。
今回は残念ながら参加できなかった皆様、次回は参加してみたいと思われた皆様。第2回目からの参加でも大丈夫です。日頃の実践で、気になる場面をいくつか記述してお持ち下さい。‘ワーク’では、ともに集う仲閒たちが大いに助けてくれることでしょう。ぜひ、自己のケアパターンに気づき、実践を変革する一歩を踏み出すことに参画してみませんか? 次回、お会いできることを楽しみにしております。
文責:今泉郷子
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