10.132022
みなさま、こんにちは。COVID-19感染の第7波が落ち着きつつある状況ではありますが、いかがお過ごしでしょうか? 今年度は、遠藤惠美子顧問の後任として三次真理新理事長が就任して初めての対話集会でした。テーマに「コロナしゃべり場 ~コロナ禍でのケア‘私って何やっているんだろう’、そこから見出せる意味はどのようなこと?~」を掲げて開催しました。コロナパンデミックからwithコロナへと変化する医療の現場で奮闘した3年間、ただ振り回される局面を越えて進んできた体験を語り合い、それらをもとにニューマン理論からの意味付けを試みました。まず、臨床の現場で影響があった「家族面会の制限」に焦点を当て、話題提供し、参加者38名 で対話をしました。そして、参加者の関心ごとに話題を分け、ブレイクアウトルームで5-6名での対話を初めて試みました。会の裏話も少し交えながらご紹介します。
1. コロナしゃべり場① コロナ禍により分断された患者、家族の看取り時の変化
話題提供者は原亜矢さんで、初期のコロナ禍で混乱した状況下で、夜勤中に無我夢中に実践したケースでした。事例は60歳代女性Aさん、アルコール性肝硬変で入退院を繰り返し、膵癌を併発されていました。家族のたっての希望で、病棟でささやかな最後のお誕生日会を開き、その数日後に永眠されました。夫とは離別で、息子二人をはじめとする家族は死に目に間に合いませんでした。到着した息子らが号泣し、「死亡宣告」ができない状況が1時間ほど経過しました。頃合いをみて訪室すると、息子が「お袋、起きろよ!俺らに弁当作ってよ、なあ、お袋の弁当食いたいよ」と、母親の遺体に泣きすがっていました。その時原さんは、生前のAさんとの対話を不意に思い出して「お母さんも『息子たちによくお弁当を作ったわ、草野球やっていたから、まったくあのバカ息子たち金ないっていうのによく食うのよ、私の弁当。だから、お金なかったけど、必死にお弁当作って届けたわ~』と、懐かしそうな表情で話されていましたよ」と、思わず伝えました。すると息子らは、「お袋が俺らのそんな話をしていたのですか~」と言いながら表情が穏やかになり、「お袋~、今までありがとな」と母親へ感謝の思いを伝え、穏やかな雰囲気へと変わりました。夜勤を共にした看護師は、その後のデスカンファレンスで、「先輩が声かけをした後、空気が一変し、息子らの興奮が収まり母親への感謝に声かけが変わったのです。私は動揺と涙が止まらず何もできませんでしたが、そんな最期を見届けることができてよかったです」と振り返っていたということでした。
対話その1:どうしてお弁当のことを不意に思い出して声かけができたのだろう?実は1か月前に遠藤先生も含めた予演会を開催していましたが、この問いに、当初原さんは言語化できていませんでした。その後自己内省され、今回の発表では「『弁当を作ってくれよ』と、亡くなった母親に求める息子らに、Aさんが今まで息子の為に必死だったことを伝えたかった」と意味づけられていました。全体では、「母からの愛情が自分たちに向いていた」ことを理解した息子らが、「死後も母に求め続ける自分たちのあり様」をパターン認識したことで、母への感謝へと変化していったのだろうと。そして原さんが生前のAさんとの対話で、母親一人で子育てし、お酒を断ち切れなかったストレスフルな健康体験に関心を注ぎ、Aさんのあり様を理解していたことが要となり、不意に浮かんだのだろうと対話しました。
対話その2:提供したケアに意味づけができた原さんのもう一つの問いは、デスカンファレンスの進め方でした。夜勤看護師の振り返りはあったものの、今ひとつ不消化な様子でした。参加者との対話を重ね、「年間目標のデスカンファレンスをこなすことに夢中になり、『Aさんの健康体験』をスタッフと共有し、自分自身が大事にしている看護を語ることができてなかったこと」を振り返っていました。きっと、この気づきからさらに洞察を深め、HEC看護師として成長されることでしょう。
2. コロナしゃべり場②の話題は、以下の4つでした
・家族面会が制限されたこと(2G)
・スタッフ間のコミュニケーションが制限されたこと
・感染状況に応じて目まぐるしい病棟編成が余儀なくされたこと
・学生指導や教育システムの変更を余儀なくされたこと(2G)
6つのブレイクアウトルームで、それぞれのファッシリテーターが対話を進めてくれました。初めての試みで役割の依頼も前日でしたが、対話の内容をご紹介頂いた際には、「コロナ禍当初のカオスから、後戻りすることなく進化したあり様が語り合われた」ことが伝わってきました。最後に三次理事長のご挨拶を紹介して筆をおきます。(文責 千﨑美登子)
三次理事長挨拶(抜粋)
対話後の皆さんの表情がとても素敵で、よい時間であったように感じます。すべてのグループに共通していたのは、コロナ禍で制限され、不自由な中、大変で疲弊してきたことにとどまらず、その過程でこれまでとは違ったやり方を工夫し、新たな考え方で物事を捉え、進んできたことが語られたことでした。また、今まさに困っていることについて、対話を通して新たな見方を共有できた様子も伝わってきました。これは、ニューマン理論の言う、決して後戻りせずに進化するということが、この対話にあらわれていたと感じました。
ニューマンのいう看護とは、ケアの対象となるその人が自分のもつ力を認識し、使えるように支援することです。すべてのグループで語られた中に、そのような実践が見えるようでした。また、患者さんと家族、学生が自分のもつ力を認識して活かせるような支援をするには、関わるナース、教員も、自身の力を認識して活かすとことが必要であると、コロナ禍になってより感じています。参加された一人ひとりが、今日あらためて自分の内にある力に目を向け、活かすことを意識していただけたら幸いです。また、ニューマン理論のエッセンスは他にもありますので、引き続き、第1回学習会で集まり、互いに学びを深めていけたら嬉しい限りです。
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