ニューマン理論・研究・実践研究会のホームページをご覧になっている皆様、こんにちは。ニュースレター第 5 号では、第 7 回 対話集会の模様をお伝えいたします。
今回は、強い勢力の台風接近に伴い、対話集会およびその前日に行われましたニューマンプラクシス学習会の開催が心配されましたが、台風一過のすがすがしい青空の元で、両日とも無事に開催することができました。
対話集会には、日本全国からニューマン理論に関心を抱く約 70 名の参加者が集まりました。そして 3 つの話題提供を受け、参加者の皆様との対話を通して学びを深めました。
話題提供者:菅野ひろみ(神奈川県立がんセンター)
ファシリテーター:宮原知子(神奈川県立がんセンター)
菅野さんが出会った患者さん(Aさん)との関わりの事例が提供されました。尚、本事例は、看護実践の科学(看護の科学社)のニューマン理論に基づく看護実践の連載 第8回目(vol.38 No.9 2013)として掲載されていますので、是非ご一読ください。
ニューマンは、患者と家族が自分たちのパターンを認識し、そこから洞察を得ることでこれからの方向性を見出すことができると述べ、そのために、「あなたにとって意味ある人々や出来事について」の語りに誘うことを提案しています。意味あることにその人(家族)の全体が映し出されているからですが、いざ日常のケアの中でとなると、この言葉をかけるのに躊躇することも多いのではないでしょうか。菅野さんは、このテーマの対話をもつことにこだわらず、日常のケアや会話の中の意味あることに意図的に注目し続けることで、ケアリング溢れるニューマン理論に導かれた看護ケアを実践されました。
話題の核心は、‘ナースが自己のセンターに立って患者・家族と向き合う’ということでした。Aさんのプライマリーナースであった菅野さんは、はじめは、Aさんの自宅療養に向
けて、力になりたいけれども関わり方に苦悩していたそうです。そこで院内で取り組まれていたニューマン理論の学習会に参加しました。そして、退院できるか否かという結果ではなく、
Aさん家族が希望を創りだし、それに向かっていくことを支えるプロセスこそがケアする上で大長する姿があいありと目に浮かんでくる内容でした。切なことだと気づいたと話されました。Aさんの病状が日々進行する中でも、菅野さんの、Aさんの力になりたいという誠実でまっすぐな関わりと、Aさんと家族の成
ニューマン理論に導かれた看護実践には、「意味あること」についての対話が前提というのではなく、日々の看護実践の全体にニューマン理論に導かれたエッセンスが存在していることが大切です。菅野さんの‘ナースである私の自己のセンター(核心)に立ってケアをする’姿は、参加者の皆様の胸にも熱く届いたように感じました。
話題提供者:春日美紀(信州大学医学部附属病院看護部)
ファシリテーター:三次真理(武蔵野大学看護学部)
ニューマン理論・研究・実践研究会の会員の皆様に対話集会での話題提供者を募ったところ、発表を試みたいと申し出てくださった春日さん。春日さんは血液内科病棟での勤務経験から、繰り返される化学療法に耐えて移植を受けても、病状悪化や再発の恐怖を抱いている血液がん患者に関心を寄せていたそうです。しかし症状観察や、無事に移植を受ける看護だけでは本当の意味で力になれていないと感じて大学院へ進学し、ニューマン理論に導かれる、この修士論文に取り組んだとのことでした。
パートナーシップを組んだBさんは、第1回目の面談で次々と話題を変えて話したそうです。春日さんは、その様子に「このままで研究が成り立つのか?と不安を感じ、研究のためにBさんを変えようとしていた」と、その時の自身のパターンを正直に話されました。第2回目の面談では、研究推進への不安を抱きながらも、「あなたの力になりたい」と改めてI care youの願いを、心を込めてBさんに伝えたと話し、そこからのふたりが共鳴する波紋は、春日さんの発表を通して会場にいた私たちにも伝わってきました。
自分自身を見つめ、自己のパターンを洞察することは大変なエネルギーを必要することでしょう。しかし春日さんは、修士論文をまとめた終えた後も、振り返りを続けて、次々と新たな気づきを得ているようです。発表の中では、Bさんの事例に加え、臨床に戻ってからのナースとしての成長についても加えられました。以前は、「原因をはっきりさせて、状況を変えよう」としていたそうですが、「まずは相手を知ろうとするで、こちらが変えようとしなくても周囲が変わっていく」ことを実感しているそうです。春日さんの根底に流れるナースとして患者さんの力になりたという一心と、まさに意識の拡張が無限に続くことを理解しました。
話題提供者:池谷理江(東邦大学医療センター大森病院看護部)
ファシリテーター:諸田直実(武蔵野大学看護学
池谷さんは武蔵野大学大学院を修了され、この話題提供は同テーマの修士論文に基づく発表でした。余命宣告という厳しい知らせは、告げるか否かの是非を超えて、患者・家族へのケアやサポート体制の質が問われる時期と考える池谷さん。そのため患者自らの力で、厳しい現実の中であっても新しい生き方へと一歩を踏み出せるように、ナースとして何とか力になりたいと願い、ニューマン理論に導かれる実践的看護研究に取り組んだとのことでした。
まず、あるがん患者会に参加していたCさんと、池谷さんとのパートナーシップのプロセスが丁寧に紹介されました。それは余命を宣告されたCさんが、悲嘆や苦悩の真っただ中からも、「最期までありのままの自分でいいのだ」という新たな生き方を見つけていく成長・成熟のプロセスでした。Cさんは、「人生における意味深い出来事や人々」について語る中で、「お釈迦さんが人生は苦しみだ。苦悩が繰り返されることを受け止め、これからも訪れる苦難を乗り越える力が自分にはある」と話したそうです。人それぞれに歩んできた人生があり、その文化や宗教の中で培ってきた価値観や信念を携えて生きていますが、それらを振り返ることによって、新たな意味が付与されて、苦しみから解放されていくことがあらわれていた言葉のように感じました。
この話題提供を受けた会場の皆さんとの対話の時間では、Cさんの妻の存在が話題の中心となりました。池谷さんは、はじめ面談に参加してこないCさんの妻に対して、がっかりし、「Cさんと妻とつなげてあげたい」との思いを抱いたそうです。しかしニューマンは一般論やエビデンスに基づくケアや次に起こることを予測したり、変化の方向性を定める操作的な思考は、苦悩する人々が成長する可能性と閉ざすと述べています。池谷さんはそのニューマン理論の意味を意識することで、つなげるという方向性へと操作的に関わることはしませんでした。妻が面談に同席しない意味や、同席はしないけれど夫妻が繋がっている意味をアセスメントではなく、常に理論を通して意味付け、ありのままを理解することに努めていた関わりが、会場との対話の中でひしひしと伝わってきました。
それは妻の在、不在を超えた、Cさん夫妻全体との相互作用に身を委ね、寄り添う豊かな環境としてのナースの姿だと確信をしました。
ここでは、参加者の皆さんが以下のテーマごとにグループに分かれ、約60分の対話の時間を持ちました。
1. マーガレット・ニューマンの拡張する意識としての健康の理論の概要
2. ニューマンの健康理論に基づく看護介入
3. 苦悩の中にある患者へのニューマン理論に基づく寄り添い
4. ニューマン理論に基づく家族ケア
5. ニューマン理論を実践するナースの成長
6. 日々のケアにおけるニューマンプラクシス
各グループ内でお互いに興味のあることについてとても有益な時間を持つことができたようです。
会長スピーチ ニューマンの理論に導かれた看護実践とは
遠藤会長よりスピーチがあり、その中でニューマン先生の80歳の誕生日を祝したパーティの映像が紹介されました。日本からは、遠藤会長と数名の研究会メンバーが渡米して参加。当研究会からは、先生にとてもお似合いのコサージュをプレゼントしました。ニューマン先生は、日本でニューマン理論が拡がり、研究や実践の場で活かされていることを大変喜んでくださっているとのことでした。
以上のプログラムを通して、対話集会の前と後では参加者の皆様の意識がそれぞれに拡張して、会場の中で共鳴し合いました。私自身、対話集会で皆様と過ごす時間が、日々臨床で患者さんやご家族と向き合うための貴重なエネルギー源となっています。
今年の 10 月には、第 5 回ニューマンプラクシス学習会と第 8 回対話集会の開催を予定し
ておりますので、皆様との再会や新たな出会いを心より楽しみにしております。
文責:濱田
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