特定非営利活動法人 ニューマン理論研究・実践・研究会

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2014年度 第8回ニュースレター

2014年度 第8回ニュースレター

はじめに

ニューマン理論・研究・実践研究会の対話集会にご参加いただいた皆様、遅くなりましたが前回の対話集会につきましてご報告させていただきます。
改築された神奈川県立がんセンターの講堂で行われ、多くの方々にご参集いただきました。天気も良く、対話集会日和でした。

第8回 対話集会

日時:2014年10月26日(日)10:00~16:00
場所:神奈川県立がんセンター

患者、家族とナースが響きあい、寄り添いのケアを実践する~日常生活支援から全体性へのケアへ ~

神奈川県立がんセンター緩和ケア病棟 鈴木景子

鈴木さんはAさん夫婦の生活を整えることから丁寧に関わり、Aさんが徐々に悪化している身体変化の自覚とその苦悩を妻と分かち合うことができないことを理解し、ニューマンの対話に誘ったそうです。お互いに気遣うがために本音で話せなかった夫婦が、意味深い出来事をありのままに語ることで、Aさんは妻の誕生日を準備されたり、メールでご自身の思いを伝えられるようになったとのことです。妻は、「死」ということばかりにとらわれていることに気付き、後悔を吐露しました。そこから、Aさんが亡くなられた後も、互いを感じながら生きるように変わられたようでした。また、鈴木さん自身も夫婦の成長の過程を見守り、身体的苦痛の緩和という部分的なケアを含めた健康体験全体に対するケアへと拡張することができていました。

上司でもあるファシリテーターに温かく見守られつつ、会場からの「辛い体験を語ることに対峙して辛くならないのか」という質問に、「Aさんを夫婦の関係性の中で捉え直すことができて意味深い体験になったと思う」と回答されていました。
その答えから会場の対話が促進され、ナースがどのような健康観や信念を持ち、勇気をもって患者とその家族に寄り添うかによって異なってくるのかもしれないと、大変穏やかで、かつ意味深い対話の時間を皆で過ごすことができました。

意思を分かち合うことができないがん患者と
その家族と研究者のM.Newman理論に基づいたケアリングパートナーシップのプロセス

日本医科大学武蔵小杉病院 藤原佳美

緩和ケアを主として行うことを告知された窮地の状態にある患者とその家族との実践の対話でした。

50歳代の卵巣がん患者のBさんは、様々な治療を行っていましたが、余命は4か月程度と診断れていました。Bさんは家族に迷惑をかけたくないと強く願い、自分の本当の気持ちを閉ざし、他者に合うことさえ避けていました。藤原さんはこのBさんの気持ちを察知し、心を込めて寄り添い、ニューマンの対話に誘いました。この対話の内容を表象図に表してみると、Bさんの「たくさん我慢してきた」一方向の人生の縮図がみえました。2回目の面接でそれをBさんにフィードバックしました。そこには、夫と父親もともに次の面接に参加しました。その表象図を見て、Bさんは今までの自己のありよう(パターン)、つまり「他の人に迷惑をかけたくない」という思いにとらわれていた自分に気付きました。そして、一緒にいた夫や父親も、自分たちも同じであり、遠慮しあい、閉鎖している姿が今までの家族全体のありようであったことに気付きました。やがて、新しい家族全体のありようさえも見えていました。その後は母親について本当のことを告げられていなかった娘にさえも現状を伝えることができ、気遣うことの本当の意味を家族全員が知ることができたそうです。藤原さんとの対話から、Bさんの目の前が開けた明るさやダイナミックさがとてもよく表れていました。

藤原さんは、対話を踏み出す時のタイミングはどのようにとらえられるのかという会場からの質問に、今までの自分の価値観に基づいたアセスメントだけではなく、患者さんの様子に表れている意味を察知し、「聴いてほしい」という思いに、ナースが聴きたいという思いを正直に示していくことが大事だと答えていらっしゃいました。それが藤原さんの「普通」のケアになっていることを、会長の遠藤先生も喜ばれていました。

午後になり、和やかな雰囲気のまま3つ目の対話を青梅市立総合病院の大西潤子さんと飯尾友華子さんがご発表されました。「がん患者・家族の生活習慣立て直し支援をめざす看護師と看護教員のアクションリサーチ~O病院看護師の認識と行動の変化~」というテーマでした。午前中の対話が個人と家族という対象に対して行われたのですが、この対話では複数の看護師が集まりました。生活習慣について、自分を素直に語り、また他者の話に心を込めて耳を傾けるという、ニューマンが言う「対話」を通じて、自らの意識を変えて生活習慣を見直し、この体験を新たに患者のケアへつなげるというプログラムが語られました。ニューマンは疾病を「生活習慣のひずみ」ととらえるからこそ、そのひずみには意味があるのだと言い、その時に今までの生活習慣を見直せば新たな健康観に至るという考えからこのプログラムが考えられました。

全看護師に対しての学習会と対話から始め、2回目以降は研究の主旨に賛同した看護師と武蔵野大学の教員がパートナーシップを組み、生活習慣のうちの食事と排泄、運動と睡眠、保温、心の持ち方と人間関係などについて、講義と演習と対話を繰り返していったそうです。そこから、参加した看護師は体に良い食事やヨガなどを体験することで、今までの生活習慣における自己のありように気づき、自分の生活習慣を立て直していこうという意欲が湧いたそうです。このことは、自分だけでなくもちろん家族に、そして患者へのケアを見直すきっかけとなっていたようです。
この方法は、ニューマン理論の極意であるパートナーシップをベースにしたミューチュアル・アクションリサーチと呼びます。研究者である大学教員と実践力のある看護師との間でこのプログラムの中心である対話をもとに、徐々に参加者の考え方や行動の中に育まれていったことが、会場からの質問をもとにより詳しく説明されました。

グループでの対話のひととき

対話集会の最終プログラムであるグループでの対話のひとときでは、6つのテーマをもとに対話が進みました。私が参加した「ニューマン理論を実践するナースの成長:自らのケアパターンを振り返ろう!」では、今までの看護師人生、これでよかったのかと考えることが度々ありましたが、今までの自身の経験をグループの方々に理解していただこうと語り、ファシリテーターの方やメンバーの方に温かい言葉をかけて頂くことで、改めて自信を持って今の仕事に従事していこうと新たな方向性がみえたそんな経験をすることができました。

会長である遠藤先生からのスピーチでは、ニューマン先生の今までのライフヒストリーをDVDで拝見することができました。改めてそのヒストリーを知ること、先生がつくられた「私は自由に耳を傾け、理解し、コミュニケーションをして誠実に相互交流をすることが好きだ。私は相互依存的に関係し合い、理解し、自分を表現するのが好きなのだ。」という詩の一部を聴くことで、「健康の理論 (Health as expanding consciousness)」が生まれた経緯をより一層理解することができました。

おわりに

また、平成 27 年度も第 9 回の対話集会を開催いたします。多くの方との対話を通じて、お互いに成長できればと思っております。どうぞ、ご参加くださいませ。お待ちしております。

文責:三浦里織

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