特定非営利活動法人 ニューマン理論研究・実践・研究会

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2012年度 第6回ニュースレター

2012年度 第6回ニュースレター

はじめに

ニューマン理論・研究・実践研究会の皆さま、お元気ですか?私は、実行委員を務めています神奈川県立がんセンターの宮原知子です。早いもので、この研究会が立ちあがってから、6年目を無事に迎えることができました。今まで開催してきた対話集会も、今年度からは、前日にニューマンプラクシス学習会を併せて開催することになりました。今回は、第1回 ニューマンプラクシス学習会と、第6回対話集会・年次集会についてご報告します。

第1回 ニューマンプラクシス学習会

日時:2012年10月6日(土)13:30~18:30
場所:横浜市立みなと赤十字病院 3階大会議室

 この学習会は、今年からの新しい取り組みです。今までの対話集会後に皆さまにご協力いただいていたアンケートの結果について実行委員会で検討を重ね実現した学習会です。対話集会ではいくつかの提供された話題-実践報告や研究報告など-に基づく対話が中心でしたが、参加したナースが自分たちの臨床現場に変化を生み出すために、もうちょっとニューマン理論について深く学びたい、自分たちの実践にどのように活用できるのか学びたいなど、多くの期待が寄せられていました。そこで、実行委員会メンバーが、実行委員会での検討はもちろん、がん看護学会の途中などの時間を利用して短時間でも集まって話し合ったり、それに引き続きメール会議などを通して少しずつ準備を進め、やっと開催することができました。

 では、学習会の内容に話題を移ります。学習会は、約40名の参加者の方をお迎えし、「どんなにまちがっていたとしても、それがきっかけとなって必ず進化する。ありのままの自分の考えをも大切にしながら、理論の発展につなげよう」という遠藤先生の言葉を合図に始まりました。

理論についての講義

担当:HEC研究会会長 遠藤惠美子(武蔵野大学看護学部)

 「ニューマン理論が生まれた背景やニューマン先生自身の人となりを理解すると、理論の理解がしやすいわよ。私もニューマン理論を学ぶ過程で
迷ったら、いつもそこに立ち戻って考えたわ」という遠藤先生の思いが十分に伝わってきた、たっぷり2時間の講義でした。ニューマン先生が生まれ
た当時のメンフィス、ニューマン先生の家族のこと、病を抱えた母親との体験からつかみ取ったニューマン理論の「意識の拡張」とはどういうことか、
そしてニューマン先生が理論を構築する過程でたどった道のりについて丁寧に紹介されました。それと並行して、ニューマン理論から抜粋された箇
所に改めて目を向けると、ニューマン先生が主張したいことへの理解がふと深まる体験をしたのは私だけではなかったはずです。

 続いて看護学(看護実践)の焦点は、「人間の健康(病気)体験におけるケアリングの探究」であるという主張のもと、ニューマン先生が考える
ケアリングの意味は、「相手を気遣って深く関わり、理解すること」と「相手が、自分のパターン(自分全体のあり様)を認識することを助けること」と
して、ケアリングについて一緒に考える機会となりました。そして、その具体的な看護ケアについてのケアリングパートナーシップ“I Care You!!”に
ついて説明を受けました。私たちナースがケアリングパートナーシップの過程を患者(家族)とともにたどる時、忘れてはならないことの一つ「倫理的
側面への十分な配慮」についても確認し合いました。

そして、このケアリングパートナーシップの特徴の一つ、患者(家族)のみならず、ナースもまた成長する過程をこれからの事例を用いた紹介へと
続きました。

その前にちょっとブレイクタイム LAUGHTER YOGA体験!!

担当:今泉郷子(武蔵野大学看護学部)

私も思わず引き込まれ、体験することに夢中であったので、細かな内容はお伝えできません。その代り、写真でその雰囲気を感じ取ってくださいね。

ケアリングパートナーシップの過程を理解する~事例を通して~

担当: 高木真理(武蔵野大学看護学部) 
   大政智枝(神奈川県立がんセンター) 
   千崎美登子(北里大学東病院:司会)

ここでは、2名のナースが体験したケアリングパートナーシップの過程を紹介しながら、具体的にそれはどのようなものかを学びあいました。

「ニューマン理論を通して看護現象を見てみると、予測できないそれまでとは違った世界が見えてくる、患者(家族)そのものも、今まで当たり前
のようにやってきた清拭や注射などの看護行為でさえも、一つひとつの意味が違って見えてくる。」この言葉から、最初に事例を紹介していただい
た高木先生の講義は始まりました。遠藤先生の講義で紹介されたケアリングパートナーシップの実践過程、それは高木先生が肺がんと膀胱がんを
抱えた患者と、当時ナースとしてどのようなことに焦点を当てたケアをしていたのかを紹介しながら、私たちは当時のその過程を一緒に追体験しま
した。同時に、私たちは「私だったら…?」と、自分たちのケアを見つめなおす作業もしていたように思います。

フロアーとの対話の中で私が印象的だったことは、「パートナーシップの始まり」について、高木先生が「自らの力を発揮できず、混乱している
ように見えるあなた(患者)の助けになりたい」というナース自身の思いであり、それはまさに“I Care You!!”のメッセージをナースが患者に伝える
ことから始まるのだということを、この事例を通して理解したことでした。

2事例目は、大政先生がたどったケアリングパートナーシップの事例でした。大政先生は、Quality Nursing Vol.9 No.3 p19-
27 2003 で出版された文献を中心に紹介しました。私自身、当時同じ病棟に所属していたので、よく知っている事例でしたが、改めてこの論文を一緒
に読みながら、ケアリングパートナーシップが患者(家族)のみならず、戸惑いながらも勇気を出してケアに踏み出したナースもまた大きく成長する
姿を改めて思いだし、その時の感動を思い起こす癒しの体験でした。

今後の実践や研究に向けた対話

担当:諸田直実(武蔵野大学看護学部)

最後は、これから実践にニューマン理論を活用することや、研究に取り組む際の関心ごとなどをもとに、参加者との対話を持ちました。実践に
導入することは、参加したナースにとって深い関心ごとではあるものの、実際にどのようにパートナーシップを組むのか、それらを実践的研究にまと
めていく際の留意点、看護教員と実践家のミューチュアルアクションリサーチについてなど、普段からニューマン理論の活用に向けた関心ごとにつ
いての話し合いがもたれました。一人でも多くの参加された皆さんが、これからの実践や教育の場でニューマン理論に基づいた実践・研究に発展で
きるようとともに、この会がよりよいものに発展するように強く願いながら学習会は終了となりました。

ニューマンプラクシス学習会は、まだ歩き始めたばかりです。この学習会に対するご意見やご要望などありましたら、事務局までご一報いただけ
ると幸いです。

また、今回のニューマンプラクシス学習会に参加された後、患者さんやご家族の見方が変わったとか、実際にケアリングパートナーシップに
踏み出したナースの皆さん、ぜひHECホームページのナースマニフェストにもご意見をお寄せください。実行委員会メンバー一同、楽しみにお待ち
しています。

第6回 対話集会

日時:2012年10月7日(日)10:00~16:15
場所:横浜市立みなと赤十字病院 3階大会議室

 ニューマンプラクシス学習会の感動も冷めぬまま、対話集会を迎えました。学習会担当者の多くは、横浜市内のホテルに宿泊した人も多かったようです。ただ、連休中だったこともあってか、宿泊料が高いと一部の人からは言われてしまいましたが、観光地横浜ですから、仕方ないですよね(横浜市民より)。一方、遠藤先生は都内のご自宅から2日間の通い…相変わらずのパワーにメンバー一同脱帽でした。
 
 さて、対話集会では、約90名が参加され、会場はほぼ満席の状態でた。今回は、3つの話題提供を受け、参加者との対話を中心に進めていきました。また後半は、7つのテーマの中から関心のあるグループに分かれ、そのテーマにそった対話を持ちました。それぞれ提供される話題については、HECホームページ「第6回対話集会」もご参照ください。

対話Ⅰ 子どもを亡くした両親の悲嘆体験に寄り添って

    ~ケアリングパートナーシップがもたらした意味~

話題提供者:森谷記代子(ケアタウン小平訪問看護ステーション)
ファシリテーター:諸田直実(武蔵野大学看護学部)

ナースとしての体験から、がんの子どもを亡くした親のグリーフケアに長い間深い関心を寄せていた森谷さん。修士課程における論文のテーマは、
表題にある通り。そして武蔵野大学への進学を決意したきっかけにもなったニューマン理論に基づく実践的研究を中心に話題提供されました。

 対話では、ニューマン理論とスピリチュアルケアの関係の考え方や、ケアリングパートナーシップにおけるフィードバックの方法(例えば表象図の表
し方など)についての理解が深まりました。何よりも私が印象的だったことは、研究参加者であった子どもを亡くしたご両親が、その別れから4年
たった今でも、森谷さんとのケアリングパートナーシップの過程を通してさらに成長を続けていったということでした。それは、前回の面談で森谷さん
から得たフィードバック(表象図)の意味をつかんだご両親が3回目の面談で、さらに亡くなった息子やさまざまな環境としての周りの人々全体が無
限の世界でつながりを感じていると話した姿となって現れました。ケアリングパートナーシップの参加者が自己のあり様を自らつかむことの大切さ
への学びが深まりました。

対話Ⅱ ターミナル期がん患者と家族とナースの関わりのプロセスを通しての

ナースとしての自己のあり様への気づき

     ~M.ニューマンの理論を踏まえての振り返りによる考察~

話題提供者:倉持亜希(大森赤十字病院看護部)
ファシリテーター:高木真理(武蔵野大学看護学部)

森谷さんに続き、倉持さんからも修士論文をもとにした話題提供でした。関わろうとすればするほど患者さんやご家族と距離が生まれていくという
体験をした実習の過程を振り返り、自らのナースとしての関わりのあり様を見事につかみ、自身の成長の過程を考察していました。患者さんやご家族
から遠く離れていくことは、ナースにとって傷つくことでもあります。しかしニューマンは、傷つきやすさは苦悩することであるけれども、その苦悩は
私たちに特定の状況への超越の機会を与えてくれると勇気づけてくれます。ニューマンのケアリングパートナーシップの過程を通して、患者さんが
自ら成長していく姿を目の当たりにすることもありますが、この対話から同じ人間としてナースもまた、苦悩の真っただ中から成長する姿をつかみと
った参加者も多くいたことだと思います。もちろん、私も勇気づけられた一人です。会場には、対話に参加しながら涙を流す参加者も多くあり、感慨
深いセッションとなりました。

 そして、最も勇気が必要だったであろう倉持さんの発表を是非聞きたいと、当日になってもまた、倉持さんと一緒に働く同僚の方からの連絡も
いただきました。今回の体験を通して大きく変容した倉持さんをよく知っているからこその参加だったと思います。これからも一番身近な同僚とも
意味ある関係が深まっていくことでしょう。

対話Ⅲ ニューマン理論を通した看護現象の見方

話題提供者:宮原知子(神奈川県立がんセンター)
ファシリテーター:千崎美登子(北里大学東病院)

当初、遠藤先生もファシリテーターとして参加予定でしたが、2日間のプログラムを取り仕切った疲れもあってか、急遽、千崎さんと私で担当
することになりました。ニューマン理論を通した看護現象の見方として、昨年度、日本家族看護学会で発表した研究をもとに対話を持ちました。会場
からは、スピリチュアルなケアとの違いや、面談が必ずしもうまく進まないケースなどについての質問がありました。ケアリングパートナーシップの
過程が、スピリチュアルな側面への癒しにつながることが確かであると思いますが、そもそもスピリチュアルとそうでない側面と分けた物の見方を
していない理論であり、その癒しの過程がその人全体の成長を促進するということを再確認しました。

【グループでの対話のひととき】

 ここでは、7つのテーマに分かれたグループで約60分の対話を持ちました。

1. マーガレット・ニューマンの拡張する意識としての健康の理論の概要

2. ニューマンの健康理論に基づく看護介入

3. 苦悩の中にある患者へのニューマン理論に基づく寄り添い

4. ニューマン理論に基づく家族ケア

5. ニューマン理論を実践するナースの成長

6. 日々のケアにおけるニューマンプラクシス

7. その他

 参加者が希望するテーマにそって、それぞれの対話のひとときを持ちました。

おわりに

 プログラムの最後は、HEC研究会会長 遠藤惠美子(武蔵野大学看護学部)先生による「ニューマンの健康の理論に導かれた看護実践とは」をテーマにした会長スピーチで締めくくられました。

 今年から始まった前日の学習会、そして対話集会と2日間にわたるプログラムは、これからの研究会の発展と、第7回対話集会での再会を祈り終了となりました。研究会として、ニューマン理論に基づく看護実践を広めていくために、どのような活動が皆さまのお役に立てるのか、たくさんのアイディアを募集しています。

文責:宮原

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